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心臓。その3(論文の検索方法と読み方) [ウィペットと心臓]

   続きを心待ちにしてくれている方がいらっしゃるかも..
と思いつつ、これから新たに2報ほど論文を読む予定です。

     ぽバドのため、というのはもちろんですが、
ここに記録してどなたかの参考になるかもしれないと考えると、
 ちょっと情報量が乏しくて何か他に出ていないかと探してマシタ。

   そんな言い訳の理由も兼ねて今回は、
     実際のウィペットに関する論文を使いながら、
       学術論文の読み方などについて書いてみようかなとー。

  ペットが病気になった時などにネットで検索しているうち、
論文らしきものが引っかかることありませんか?...ないかなぁ(;´▽`A``

 最新だったり、より的確な情報を得ることができる場合があるのです!

IMG_9644 (1).jpg


 続きはこちらから〜↓

     学術論文とは、研究者や獣医などが新しく発見した知見を、
材料や方法、結果など特定の構成でまとめ学術雑誌に掲載したものです。

      雑誌に投稿すればすぐ掲載されるわけではなく、
審査をうけ追加実験を求められる場合もあり掲載までは茨の道です。

   どの論文でもネット上で概要を読むことはできますが、
全てを読むためには雑誌の購読が必要な場合がほとんどです。
   (Freeの場合もあり、その論文は全て読めますー!)

とはいえ概要だけでそれなりの情報を得ることができます。

         ですが、論文タイトルと結果だけを見て、
「論文に書かれていたからこうなんだ!」と思ってはいかんのです。

 どんな条件や材料でその研究が行われたかなどの詳細を読まないと、
       自分が必要としていた内容ではない場合があるためです。
            可能ならば全文を読みたい。読みたくなるのデス。

           ちなみに、前回、前々回ことあるごとに、
ウイペットでは〜の傾向にある」と書いていたのもそのためデシタ!

IMG_9131のコピー.jpg

 ではでは、まずは論文検索サイトのひとつをご紹介。→ PubMed

       例えば、「whippet」でserchしてみましょー

 すると、タイトルや概要に「whippet」が含まれる論文の一覧が表示されます。
          そこから読みたい論文のタイトルをクリックするだけ!

         ではさらに、具体的にとある論文を例にしてみます。

    「Echocardiographic reference values in Whippets」*11
              ウィペットの心臓エコー検査の参照値

       これはまさしく、私たちが知りたい内容の論文ではないデスカ!!

 大抵はどの論文でも同じで上からこのように表示されます。
    ・掲載されている雑誌名や号、頁番号(著者の後に書かれている場合もあり)
    ・論文のタイトル
    ・著者
    ・概要
    スクリーンショット 2018-04-26 16.22.44.png
                      (参照リンク:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17508509

どれどれ〜と辞書を片手に読み進めましょー

       概要にはまず、この研究の目的が書かれています。
  次に実験の方法や材料が示され、結果と結論や考察と続きます。

  上の論文で書かれていることを、ごくごく簡単にまとめるとこんな感じ。

研究目的:ウィペットの心臓エコー検査値の確立
             今までの一般的な基準値との比較
             性別やbreeding lineで値に影響するかどうかを決める
 方法:*専門的すぎるので省略
 結果:1.収縮期、拡張期において左心室径が著しく大きい
             左心室壁、心室中隔の暑さの増加
         2.体重差を考慮し、雌雄で比較するとメスの方が左心室径が大きい
            レース血統とショー血統の違いはminorである
 結論:エコー検査において、品種別の基準値が必要とされる
          ウィペットにおいて、心臓の拡張や肥大の過剰解釈を避けるため、
          本研究の参照値を参考にすることができる

              さてここで、
   「うちのイヌもそうなんだ!」と結論づけてはならぬのデス。

   この概要を読むと、気になることがたくさんあります。
     それら気になることのうちの2点を挙げてみます。

         1.いったい何頭のウィペットで測定を行っているのか
         2.レース血統とショー血統、それぞれ何頭ずつ測定したのか

      10~20頭だとかの結果で参照値にしてね!と言われても困ります。
       (実際にはそんな少数で論文になることはほぼないけれど・・)

       また、海外ではビジネスとしてもドッグレースが行われていて、
            さらにレースのために定期的な訓練を受けている、と聞いています。

             レース血統とショー血統のウィペット。

       体格はもちろん筋肉や心臓などの内臓も異なりそう。
「違いはminor」とあるけれど、これまた実際に何頭ずつで測定したのでしょう?

    IMG_9382.jpg
      そう、そしてぽバドはショー血統。定期的な訓練もしていない。
   遊びたい時に遊び寝たい時には寝る、お気楽ぅ〜な毎日を送っております。

        この研究で言っていることは、
                   ぽバドにどれくらい当てはまるのだろうか。

        だから全文を読みたくなる、というわけなのです。

   で、この論文。担当医のおかげで全文を読むことができております。

          ちなみに学術論文の複製と著作権についてですが、
               私的使用の場合には著作者の承諾を必要としません。

   というわけで、コピーをいただきました!全部で9頁ありまして、
        測定一つ一つの方法や計算と結果その考察が詳細に書かれており、
             また測定結果などは表やグラフなどで示されています。

IMG_9687.jpg

  そして気になる測定に用いた検体数やその内訳はといいますと。

  ・総数 105頭(オス51頭 メス54頭)
       レース血統                                   89頭
       ショー血統                                   10頭
       レース血統とショー血統の交雑血統     6頭
  ・月齢 10~169か月 体重 9.3~17.2kg(13.2±2.1kg)

     ほぼ、レース血統やないかーい!!(ノ゚⊿゚)ノ

  ね?全部を読まないと判断できない。
せめて測定に使った条件を知る必要がある。だけれども、

     ・ほぼ、レース血統のウィペットの結果であること
     ・ほぼ、定期的な訓練を受けているウィペットの結果であること

     これらの条件を知ることができたならば、
  この条件を前提にしてこの研究で得られた数値を参考にすることは可能です。

 そしてさらに興味深いことも書かれていました。

             僧帽弁逆流症についての結果。

この症状の重症度をtrivial<mild<moderate<severe の4段階で表現するらしく。
(具体的な区分けの基準はただいま調べ中。ご存知の方、ぜひ連絡くださいー)

  測定に使われたのはmoderateとsevereの状態を除いたウィペット105頭。
     それら105頭の心臓エコー検査での結果。
 総数105頭
     36頭(34.3%)肺動脈弁逆流:mild 1頭 trivial 35頭
     45頭(42.9%)僧帽弁逆流:mild 12頭 trivial 33頭
     29頭(27.6%)右房室弁逆流:mild 4頭 trivial 25頭
     彼らは「心疾患」の診断は受けておらず、
            「健康」という前提で集められたイヌ達です。

     ここから何を考えればよいでしょう。
              (上に書いた条件を前提として・・)

 弁膜症について、他犬種とウィペットではスタートラインが異なるのではないか。
         ということを私は考えました。

  一般的に弁膜症は、カラードプラ法だけでなく実際の弁の状態や、
     その他の心臓エコー検査値などから総合的に判断して診断を行うそうです。

 他犬種の場合には弁からの逆流が発見されると、
      「弁膜症」である可能性が高くより早い対応が必要、かもしれない。

 けれども、ウィペットでは(上に書いた条件を前提として)、
   不安になりすぎず、元気でも弁逆流のコがそれなりにいるみたい〜と、
             考えても良いのかもしれない、という感じ。

   まわりくどいのはなるべく誤解を与えないように、
                        という考えからですー(
;´▽`A``

 「ウィペットの心臓は他犬種より大きい」という認識に近い感覚かも。

 とはいえ、油断は禁物。

     逆流がわかったら定期的な検査をすべきだと思います。

   逆流している状態から始まっている可能性があるため診断はより難しく、
 その他の検査値などとの総合的な判断がより重要になってくると思います。

        しかも、この論文だけじゃぽバドの状態を判断できない。
     ショー血統での測定結果も含め、もっともっと情報が欲しい!!

     というわけで、面白そうな論文を見つけたのでこれから読みます。
 ひとつは健康なウィペットの心雑音と僧帽弁逆流の罹患率を調べたぽいもの。
 もうひとつはウィペットの心電図参照値について。でも、
   こちらは心電図の勉強を全くしていないので後回しにするかもです。

 では、最後に。

  ぽバドの検査値や身体的所見と、上の論文のデータを並べてご紹介。
        (別の論文から拾ってきた数値が一部あります)

 ↓ウィペットの参照値については、これらの条件を前提に考えましょうー
     ・ほぼ、レース血統のウィペットの結果であること
     ・ほぼ、定期的な訓練を受けているウィペットの結果であること

2.png
  *赤文字はウィペットで異なる傾向にあるもの
  *VHSのウィペット参照値 L及びRは測定時の臥位の向き
     文末の参照を検索していただくと、ウィペット以外の犬種でのVHSもあります


・身体症状(咳、呼吸の異常、ふらつき等):ぽバドともに無
・心雑音:ぽー有、バド無
・弁膜の逆流:ぽー僧帽弁と三尖弁、バド僧帽弁
     
  補足
・ぽーの心雑音について
   常にあるわけではなく、強度も日によって異なる。深呼吸をした際にも有。
    (自宅でのんびりしている時の聴診オススメですよー)
・逆流について
   ぽー→僧帽弁逆流と三尖弁より逆流有り。
           三尖弁逆流は僅かだが、僧帽弁逆流の流速は6m/s
   バド→僧帽弁逆流が僅かにみられる
・弁膜、心筋の状態
    ぽバドともにはっきりとした変化や異常はみられない

 つづく・・・

*11 Bavegems V,Duchateau L,Sys Su,De Rick A.
       Echocardiographic reference values in Whippets
       Vet Radiol Ultrasound.2007 May~Jun;48(3):230-8.
*12 James W. Buchanan, DVM, M Med Sci, DACVIM
       111 Vertebral Heart Size(VHS)
       The James Buchanan Cardiology Library.
October 14, 2009 (published)

コメント(6) 
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コメント 6

マーヤの乳母

こんにちは(*^^*)
す、すばらしい!!内容理解するのに必死ですがこんなふうに詳細に知ることができてうれしいです。
ウィペット(ショー系)の基準値が知りたいですね。
BNP検査、次の健診で是非追加してもらいます。
いつも心雑音を聴いてはい、異常なし!で喜んでいました。
同胎だから同じ傾向があるかも。
はからずも飼い主の方が心臓の検査をする羽目になり、心エコー、
ホルター心電図など自分の心臓が働く様子、
弁が規則的に動く様子、血流の流れる状態などしみじみ前回の記事
を思い起こしながら見た次第です。
犬の場合は弁膜症がほとんどなのかなあ。
続き、楽しみに待っております(^^♪
by マーヤの乳母 (2018-04-29 16:44) 

micky

>マーヤの乳母さま
こんにちは〜ありがとうございます!
まさか乳母さんの検査のお役に立てたとは〜
心臓の仕組みはヒトもイヌも同じですもんね。

イヌの僧帽弁閉鎖不全症は加齢とともに発症率も上がり、
全ての犬種において心臓病の中では多い症状だそうです。
そして、弁膜症が先に起きてその他の症状が出る場合、
他の部分に原因があって弁膜症が起きる場合など様々あるようです。

健康診断の際にレントゲンを撮っていれば、
VHSの推移を記録しておくことも良いと思いますー

ショー血統とレース血統の血統の違いなのか、
訓練によるものなのかどちらが影響しているのかは不明ですが、
ウィペット全般に左心室が大きかったり、
収縮率が低いということがいえそうな雰囲気です。

日本にいるウィペットたちのデータバンクを、
どこかの先生が作ってくれたらいいなぁ・・
by micky (2018-05-04 10:15) 

sa@co

近々、ニロの心臓定期検査なので
先生に論文読んでくれって伝えようと思います!
既に読んでるかもしれないけど^^;

以前、ニロのVHSが基準値より大きいと指摘されて、
その時私も論文調べて概要だけ読んだの。
訓練されたウィペットのVHSは大きいと知り、
安心てゆうか納得したんだけど。←ニロ爆走族だから。笑
逆流があるウィペットも多いんだねー。
実際、知り合いのウィペットでもちょいちょい聞くもんね。

今後のレポも楽しみにしてます!
by sa@co (2018-05-29 11:34) 

micky

>sa@coちゃん

にっくん、現状維持でほっとした〜

幼い頃から心雑音のある個体も多いみたいなのよ。
心雑音がウィペット特有の心臓や肺からくるものなのか、
逆流からなのかその判断を的確に行う必要があるということで、
今まさにアメリカの医師がデータを集めたりしているところみたい。

ウィペットたちの心臓については、
まだまだ研究途中なのだということを痛感した。

この記事書いてからもう1ヶ月も経ってしまったね><
次の論文早く読んでここに書けるよう頑張る〜!
by micky (2018-06-07 16:05) 

近所のnanamama

パソコン買い換えたら、このページがお気に入りのずっと下の方になって見忘れていた間に、先日話されていたことが詳しく書かれていましたね~

難しすぎてちょっと理解が十分ではないですが、ウィペットならではの症状であることが少しわかりました。

ナナもそうですが血統書のある犬はMIX犬に比べて、特有の病気があると言いますね。

昔キャバリア(この犬種こそ心臓病が多く、「オーバー10」言って、10歳生きれば上々という意味です)を飼っていた時に気にしていた病気です。

獣医さんにどの犬種が丈夫ですかとお聞きしたら「雑種です!」と言われたのも、なるほどと思いました。

愛犬には苦しむことなく、楽しく暮らしてほしいものです。


by 近所のnanamama (2018-06-22 17:21) 

micky

>nanamamaさま
返信が随分と遅くなってすみません!
週に一度はおしゃべりしてるのになぁ^^;

ウィペット特有かもしれないこと、
他犬種でもいえることの区別をちゃんと書けてないかもー><

基準値より心臓が大きいことや収縮率(FS)が低いことなどは、
ウィペット特有に現れることが多いようです。

けれど、弁逆流については加齢に伴い、
どの犬種でも起きる可能性があるようです。

そしてキャバリエと同じく、
心臓病のリスクが高い犬種は他にもいて・・という感じですねぇ。

ウィペットの心雑音や弁逆流について海外ではメジャーなようですが、
日本では「気をつける病気」リストには入っていないんですよね。

ほんとうに、どの子も1日でも長く元気に楽しく飼主と一緒にいてほしいです。
by micky (2018-08-18 12:19) 

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