心臓。その4(僧帽弁閉鎖不全症) [ウィペットと心臓]
ウィペットおよびイヌの心臓について、僧帽弁閉鎖不全症について。
論文などの情報を元に私の勝手な解釈を加えつつ、
『心臓その1〜その3』まで書き連ねてきたわけですが。。
チョット悩みすぎて筆が止まっておりました。
「ウィペットと他犬種の違い、それを踏まえた投薬開始のタイミング」
そこの糸口が一向に掴めず、悶々としていたところに!
光明が差したぁ〜♪友人が投薬前後4回分の検査結果を送ってくれまして。
それらデータを持って、ぽバドを車に乗せてお出かけデス。
続きはこちらから〜↓
論文などの情報を元に私の勝手な解釈を加えつつ、
『心臓その1〜その3』まで書き連ねてきたわけですが。。
チョット悩みすぎて筆が止まっておりました。
「ウィペットと他犬種の違い、それを踏まえた投薬開始のタイミング」
そこの糸口が一向に掴めず、悶々としていたところに!
光明が差したぁ〜♪友人が投薬前後4回分の検査結果を送ってくれまして。
それらデータを持って、ぽバドを車に乗せてお出かけデス。
続きはこちらから〜↓
約半年ぶりのぽバド心臓エコー検査でございます。
ぽバドと友人犬3頭分のデータ。主治医と眺めながらあれこれ話をして。
おかげさまで、見えてきマシタ〜!!
・犬種関係なく、僧帽弁閉鎖不全症で見るべきポイントはほぼ同じかも
・現在のぽバド、特に気になる症状は無し
・各エコー検査図や数値において、ぽバドの状態は前回とほぼ変化しておらず
(バドに至っては以前より改善しているという不思議現象)
結果、『今はまだ投薬は不要』という結論に達しました。
さて、そんなわけで、今回は。
1.心臓エコー検査のどの項目で僧帽弁不全症がわかるの?
2.投薬開始時期の目安は?
これらについてまとめてみたいと考えています。とはいえ・・
間違いや勘違いを記している可能性が大いにあります。
必ず、絶対に主治医とよく相談してくださるようお願い致します。
でも、もし、お役に立てたら幸いです。投薬等々、ほんと悩みますもん・・
ではここで、『心臓。その2』で登場した模式図の再登場!
僧帽弁閉鎖不全症に焦点をあてるので、赤く塗った左側に注目です。
血液は肺動脈から、左心房(LA)→ 左心室(LV)→ 大動脈(Ao)、
そして全身へと運ばれ、肺静脈から右心房へと戻ってきます。
続いては、心臓エコー検査における僧帽弁閉鎖不全症のチェック項目!
ぽバドと友人犬3頭分のデータ。主治医と眺めながらあれこれ話をして。
おかげさまで、見えてきマシタ〜!!
・犬種関係なく、僧帽弁閉鎖不全症で見るべきポイントはほぼ同じかも
・現在のぽバド、特に気になる症状は無し
・各エコー検査図や数値において、ぽバドの状態は前回とほぼ変化しておらず
(バドに至っては以前より改善しているという不思議現象)
結果、『今はまだ投薬は不要』という結論に達しました。
さて、そんなわけで、今回は。
1.心臓エコー検査のどの項目で僧帽弁不全症がわかるの?
2.投薬開始時期の目安は?
これらについてまとめてみたいと考えています。とはいえ・・
間違いや勘違いを記している可能性が大いにあります。
必ず、絶対に主治医とよく相談してくださるようお願い致します。
でも、もし、お役に立てたら幸いです。投薬等々、ほんと悩みますもん・・
ではここで、『心臓。その2』で登場した模式図の再登場!
僧帽弁閉鎖不全症に焦点をあてるので、赤く塗った左側に注目です。
血液は肺動脈から、左心房(LA)→ 左心室(LV)→ 大動脈(Ao)、
そして全身へと運ばれ、肺静脈から右心房へと戻ってきます。
続いては、心臓エコー検査における僧帽弁閉鎖不全症のチェック項目!
僧帽弁閉鎖不全症を知るために必要な項目の一部 ① 僧帽弁の観察 ② 左室流入血流(E波、A波)の観察 ③ 左心房(LA)の拡張の有無 ④ 逆流の観察(カラードップラ法、逆流モザイク血流) ⑤ 左心室(LV)の観察 |
その他、身体症状やVHS(胸骨心臓サイズ)、FS(左室内径短縮率)等々、
身体の全てを総合的に診て先生方は判断しています。
しかしウィペットではVHSやFSなどが基準値と異なる傾向にあるため、
ここでは敢えて省略します。(ウィペットの参照値については後述)
また特に、①④⑤ についてはリアルタイムで見るエコー図が重要です。
もし可能ならば、検査中に見せてもらうことお勧めです。
拍動する心臓や開閉を繰り返す弁の様子、
弁からの逆流がある場合にはその程度なども見ることができます。
写真等はこちらへ → 心臓。その2
というわけで、上記項目のうち主に②と③についての説明を。
E波(拡張早期波)とは、
左心房(LA)にたっぷりと血液が溜まると、左心室(LV)がドクンっと大きく膨らむ(拡張)。
それにより左心房(LA)内の血液が左心室(LV)側へ引き込まれることで起きる流れ。
A波(心房収縮波)とは、
左心室(LV)が拡張し終わると、左心房(LA)がきゅっと縮む(収縮)。
それにより左心房(LA)内に残っていた血液が左心室(LV)側へと押し流される時の血流。
健康な心臓ではこのE波とA波のバランス(E/A)がある程度保たれています。
ところが。
身体の全てを総合的に診て先生方は判断しています。
しかしウィペットではVHSやFSなどが基準値と異なる傾向にあるため、
ここでは敢えて省略します。(ウィペットの参照値については後述)
また特に、①④⑤ についてはリアルタイムで見るエコー図が重要です。
もし可能ならば、検査中に見せてもらうことお勧めです。
拍動する心臓や開閉を繰り返す弁の様子、
弁からの逆流がある場合にはその程度なども見ることができます。
写真等はこちらへ → 心臓。その2
というわけで、上記項目のうち主に②と③についての説明を。
E波(拡張早期波)とは、
左心房(LA)にたっぷりと血液が溜まると、左心室(LV)がドクンっと大きく膨らむ(拡張)。
それにより左心房(LA)内の血液が左心室(LV)側へ引き込まれることで起きる流れ。
A波(心房収縮波)とは、
左心室(LV)が拡張し終わると、左心房(LA)がきゅっと縮む(収縮)。
それにより左心房(LA)内に残っていた血液が左心室(LV)側へと押し流される時の血流。
健康な心臓ではこのE波とA波のバランス(E/A)がある程度保たれています。
ところが。
僧帽弁閉鎖不全症が重症化してくると、E波は速くA波は遅くなる それとともに③ 左心房(LA)の拡張がみられる |
では、僧帽弁からの逆流が起きると、なぜ上のような状態になるのか?
極端な場合の表現になりますが、以下のようなことが心臓で起きているそうです。
左心室(LV)へと流れた血液が左心房側へと逆流する ↓ 左心房(LA)が血液でいっぱいになり膨らむ 左心房圧が高くなる<左心房(LA)が拡張する> ↓ 左心室(LV)が血液を吸い込もうと頑張り、左心室(LV)が血液でぱんぱんになる E波が速く<高く>なる ↓ 左心房(LA)が左心室(LV)へ血液を送ろうとするが、 左心室(LV)は血液でぱんぱんなため送れない A波が遅く<小さく>なる ↓ 再び左心室(LV)へと流れた血液が左心房側へと逆流する ↓ |
うーん。アニメーションで説明できたらなぁ。。。
気を取り直して、具体的な数字で見ていくことにしましょー
正常値は具体的にいくらなのか。逆流の重症度の数値はどれくらいなのか?
*僧帽弁逆流の重症度は、これら数値だけでなく弁の状態・逆流程度など、
他の様々な要素も合わせて判断することお忘れなくです。
まずはE波とA波以外の項目について、前回貼った参照値リスト再登場!
ちなみに左心房(LA)の拡張は、
左心房(LA)の内径と大動脈(AO)の内径を比較した数値でみていきます。
→ 心臓。その2
また、ウィペットの参照値については以下の論文より抜粋。
*1 Bavegems V,Duchateau L,Sys Su,De Rick A.
Echocardiographic reference values in Whippets
Vet Radiol Ultrasound.2007 May~Jun;48(3):230-8.
*2 James W. Buchanan, DVM, M Med Sci, DACVIM111 Vertebral Heart Size(VHS)
The James Buchanan Cardiology Library.October 14, 2009 (published)
基準値 | ウィペット参照値*1 | |
VHS | 10.5以下 |
ショー血統 L10.5 R10.8*2 |
BNP(pmol/L) | < 900 | |
AO(mm) | 17.5〜23.7 | |
LA(mm) | 23.1〜35.9 | |
LA/AO | 1〜1.5 | 1.32〜1.5 |
LVDd(mm) | 39〜 | 33.8〜48.4 |
FS(%) | 33〜46 | 27.7 |
VHSのウィペット参照値のL及びRは測定時の臥位の向き
続いて、E波とA波の参照値としては、参考文献としてとてもお世話になっている、
グリーン動物病院の田口大介先生のレポートより抜粋。
*正常例、重症度評価の値はいずれもグリーン動物病院の患畜さん、
および田口先生が集めたデータがもとになっています。
判断基準は先生方で異なるため、主治医と充分に相談なさってください。
またレポートはPDFで入手可能ですのでぜひどうぞですー
田口大介(2014)「心臓エコー図検査ーその10」Vol.40(No.1),15-16,岩獣会報
田口大介(2014)「心臓エコー図検査ーその11」Vol.40(No.2),49-50,岩獣会報
⑴ E波の正常例 1〜10歳 平均0.73m/s 多くが1m/s以下で、1.2m/sを超えることはほとんどない 11歳以上 平均0.63m/s ⑵ E/Aの正常例 6〜10歳 0.5< E/A < 1.5 11歳以上 0.5< E/A < 1.0 ⑶ 僧帽弁逆流の重症度評価 *弁の形態、左房の拡張程度なども踏まえて観察する。また、 年齢、脱水の程度でE波血流速は変化するため大まかな例として考える。 ⑶-1.超重症例 E波 1.5m/s以上 E/A 2.0以上 ⑶-2.重症例 E波 約1.2m/s以上 1.5< E/A <2.0 ⑶-3.中等例 E波 約1.2m/s以下 1.0< E/A <2.0 |
僧帽弁からの逆流がある場合にはE波とA波のバランス(E/A)に変化が現れるようです。
また、ぽバドの主治医やデータを送ってくれた友人犬の担当医も、
僧帽弁逆流の重症度の判断にE/Aと左心房の拡張(LA/AO)の程度を見ていました。
さて最後になりますが 2.投薬開始時期の目安は?について。
ここで、ぽバドの心臓エコー検査結果の一部をご紹介!
ぽー | バド | |||
2018.4.3 | 2018.8.21 | 2018.2.20 | 2018.8.21 | |
VHS | 10.5 | 10.0 | ||
AO(mm) | 16.6 | 17.7 | 15.2 | 17.8 |
LA(mm) | 21.8 | 26.6 | 25.3 | 25.3 |
LA/AO | 1.31 | 1.5 | 1.66 | 1.42 |
LVDd(mm) | 47.6 | 43.6 | 54.0 | 50.9 |
FS(%) | 26.5 | 24.8 | 26.5 | 27.5 |
E波(m/s) | 0.65 | 0.95 | 0.68 | |
A波(m/s) | 0.72 | 0.89 | 0.65 | |
E/A | 0.9 | 0.9 | 1.0 |
・E波とA波のバランス(E/A)もそれほど悪くない
・心疾患に特有の気になる症状が特にない
・ぽバドそれぞれ程度は違えど逆流は起きている、けれど軽度
・弁の状態は良好
・左心室、心筋の状態は良好 etc...
これらのこと、そして友人犬の投薬前後の検査結果を参考にして、
ぽバドの投薬『今は、まだ不要』と決めマシタ。
心臓の薬は使い始めると一生必要となりやめられないものが多く、
その他の疾患や現在飲ませている薬との兼ね合いが難しかったり、
そして高価である、など様々な要素を考える必要があります。
そのため、投薬開始時期の目安についての正解は無い!
かもしれない...ゞ( ̄∇ ̄;)ヲイヲイ
なぜかと言いますと、
イヌの年齢、各検査結果や現在の容態・状態。そして、
家庭の事情等も含め飼主が悩み考えて決めたことが正解ではないか、
と、思ったからなのです。
とはいえ、めっちゃ悩むことに変わりはないわけで。
だからこそ、同じく悩んでいる飼主さんたちの助けに少しでもなれればいいなぁ。
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